日本美術教育学会倫理綱領

（AESJ Ethical Principles）

前文

　日本美術教育学会は、すべての人の基本的人権と尊厳に対して適切な敬意を払い、これを侵さず、人間の自由と幸福の追求の営みを尊重し、美術教育学における研究および実践活動、またそれらに関連する教育諸活動に携わる。

　日本美術教育学会会員は、美術教育学の専門家としての社会的自覚と責任の下、研究・教育・実践活動等に携わるなかで、その協力者となる者に対して、個人のプライバシー、秘密の保持、自己決定および自律性という個人の権利を尊重し、特に、子供の健全な発達とそのための教育活動を損なわないよう十分に配慮する。またこの実現は、会員個人の自律性に依拠するものであるが、会員は相互にこれに関心を払い、研究倫理にかなわぬ行動を防ぐよう留意しなければならない。

　本学会は、上記の主旨に基づき、以下の条項を定める。

第1条　人権の尊重

日本美術教育学会会員は、研究・教育・実践活動等の実施および公表において、基本的人権につねに配慮し、個人のプライバシーや社会的規範を犯す行為をしてはならない。特に子供の健全な発達を損なうことがあってはならない。

第2条　研究実施のための配慮

研究・教育・実践活動等を行うとき、研究協力者に対しその研究目的、研究内容等を十分に説明する義務を負う。但し、研究協力者が同意・了解の判断が困難な場合には、研究協力者を保護する立場にある者の判断と同意を得ることが必要である。また、研究のすべての過程において強制してはならないとともに、研究実施に際しては、教育活動とりわけ子供に及ぼす影響に対する配慮が必要である。

第3条　情報管理の厳守

研究・教育・実践活動等によって得られた情報については厳重に管理し、実施時に同意を得た本来の目的以外に使用してはならないと同時に、同意を得た情報以外は利用してはならない。

第4条　研究成果の公表に伴う責任

研究・教育・実践活動等で得られた成果を公表する場合には、それがもたらす社会的、人道的、政治的意義に十分配慮し、専門家としての責任を自覚して行わなければならない。公表に際しては、あらかじめ協力者の同意を得なければならないと同時に、了解なしに協力者が特定されることがないよう配慮する必要がある。研究のために用いた資料等については出典を明記し、また、共同研究においては、共同研究者の権利と責任に配慮する必要がある。

第5条　研鑽の義務

日本美術教育学会および会員は、その学問的誠実性と自律的行動を促進するため、本綱領の周知・理解と実行へ向けた研鑽の機会を持たなければならない。

第6条　倫理の遵守および抵触疑義への対応

日本美術教育学会および会員は、本倫理綱領を十分に理解し、その徹底に努めなければならない。万一、本倫理綱領に抵触する疑義が持たれる事態が生起した場合には、本学会は会員の研究活動の公正性を確保するため、日本美術教育学会委員会が倫理問題調査委員会を設置しその事態に対応する。

　

附則

本倫理綱領は、平成25年9月1日から施行する。